デモンズナイトフィーバー
喜多山 浪漫
episode 07
「よいか、狂死狼よ。今から貴様に邪神流キルバトルの伝授する」
「邪神流キルバトル……」
「バトルにおいて最も重要な要素は『キルスキル』である」
キルスキル――
邪神様によるとキルとスキルを掛け合わせた造語らしい。デモンズナイトフィーバー専用に邪神様が開発したオリジナルゲームシステムらしいが、キル(殺す)とスキル(技能)とは……ただの駄洒落じゃ済まされない不穏な響きを感じる。しかし、同時にワクワクもする。俺の中に蠢く悪が、早くやってみろと急かしてくる。
「キルスキルとは、しもべを故意にキルしたときに発動するスキルである。いくら従順ではないとはいえ、しもべをキルするだけでは単純な戦力ダウンになる。そこで、しもべをわざとキルした場合に強力なスキル、いわば必殺技が発動するシステムにしたのだ」
邪神様の解説によると、しもべたちのステータス画面をチェックすれば各しもべが保有するキルスキルを確認できるらしい。
どれ。さっそく各しもべのキルスキルをチェックしてみると……。
戦闘員・ペロリンジャー
キルスキル:前方の敵に大ダメージを与えて死ぬ。
戦闘員・カリパクキッド
キルスキル:四方の敵に中ダメージを与えて死ぬ。
戦闘員・正義マン
キルスキル:左右の敵に中ダメージを与えて死ぬ。
全員が全員何らかの形で邪神勢力にプラスに働く効果を残し、そして死ぬ。キルスキルだから当然なんだけど、一切の例外なく死ぬ。
ちなみに味方と言わず、邪神勢力と呼ぶところにもこだわりを感じる。邪神に味方はいない。いるのは敵か、しもべだけということか。
「大事なのはタイミングだ。最も効果的なタイミングを見計らって、しもべをキルすることが勝利への近道となる」
「で、そのタイミングを決めるのは俺ってわけか。ひどいこと考えるなー、この人」
「にゃはははは。そう褒めるでない」
いや、褒めてないけどね。邪神様にとっちゃ褒め言葉なのかもしれないけど。
……と、まあ事前にレクチャーを受けてはいたが、いざバトルが始まってみるとなかなかそのタイミングってやつが来ない。
戦隊ヒーローたちが俺たちを滅ぼそうとあちこち動き回るのは当たり前として、問題は俺のしもべであるはずの戦闘員どもがちっとも言うことを聞かないことだ。さすがに俺を攻撃してくるなんてことはないけど、おのおの勝手に移動して勝手に攻撃したり攻撃しなかったりと、全然思い通りに動いてくれない。なんだか学級崩壊した小学校の先生にでもなった気分だ。従順じゃないとは事前に聞いちゃいたが、これはひどくね?
しかし、こちとら社畜。理不尽にも我慢にも慣れっこだ。
辛抱強く時が満ちるのを待つこと数分。ようやく瀕死のダメージを負った戦闘員・ペロリンジャーの前に3人の戦隊ヒーローが綺麗に並んだ。
戦闘員・ペロリンジャー
キルスキル:前方の敵に大ダメージを与えて死ぬ。
ペロリンジャーをキルしてキルスキルを発動するなら、今しかない!!
「フハハハハハ! 我が勝利の糧となれ!!」
あらかじめ決めていたセリフを高らかに発し、ペロリンジャーをキルする。
キルも悪行と同じく、ボタン一つでポチっと殺れちゃうから不思議と抵抗はなかった。相手がもともとキルノートにノミネートした悪党ってこともあるし、邪神様の作ったゲームの世界だという現実味のなさのおかげか文字通りゲーム感覚でできちゃうのだ。
背後から俺にキルされたペロリンジャーは断末魔の叫びと共に爆散し、ステータス画面の説明通りに前方の敵×3に大ダメージを与えた。
威力は抜群。爆発のダメージで戦隊ヒーロー×3は帰らぬ人となった。
よし、計算通り。
しかし、更に計算外の出来事が起きた。
爆発に巻き込まれた他の戦闘員までキルしてしまったのだ。これはマズい。意図せぬ戦力ダウンになってしまう。
……と思ったら、巻き込まれた戦闘員・カリパクキッドも俺への恨み言を叫びながら爆散。左側にいた戦隊ヒーローに大ダメージを与えて共倒れ。
更に更にその爆発の影響範囲内にいた戦闘員・正義マンまでもが巻き込まれてキルスキルを発動。正義マンの後方にいた最後の戦隊ヒーローもこっぱみじんになって消えた。
結局たった一度のキルでキルスキルが三連鎖し、戦場に残ったのは俺だけになった。
戦隊ヒーロー相手に死の連続コンボを決めてしまった。
よい子が見たら泣くな、これ……。
「にゃはははは。やるではないか、狂死狼。さすがは我が選んだ使徒だ」
「ま、まあな」
まだドキドキしている俺の心情など露知らず、邪神様はご機嫌さんだ。
キルスキル――
まさかここまでの威力とは。使い方次第では強敵も一掃できる。これが邪神流キルバトル、これが悪の力か。
そもそも味方がいないから味方の損害を気にしなくていいのも素晴らしい。まるで人間がゴミのようだ。
そして何より、しもべも敵も全員キルノートにノミネートした悪党どもってのが最高だ。全員キルして、そして誰もいなくなった状態になっても気分爽快、愉快痛快。
よーし。この調子で悪の道を突き進んでやるぜ。
フハハハハハ。