キマイラ文庫

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デモンズナイトフィーバー

喜多山 浪漫

episode 09

 そんなこんなで邪神復活の儀式デモンズナイトフィーバーを成功させるために必要な最低限の知識を突貫で詰め込んだ俺は、いよいよ本格的に邪神の使徒としての活動を始めることになった。


「さあ、ゆけ! 怪人・狂死狼よ! 内に秘めたる悪を今こそ解き放つのだ! そして見事、地元征服を果たしてみせよ!! にゃ~はっはっはっはっはっ!!」


 邪神復活の第一歩を踏み出すとあってか、邪神様は上機嫌だ。


「それにしても地元征服って……。しょぼくて、どうにもしまらねえな。……まあ、いいけど」


 スケールの小ささは、お前の器の小ささのせいだと言われているような気がして愚痴をこぼしていると、いきなり目の前が真っ暗になった。

 先行き不透明な未来にお先真っ暗とか、そういうことじゃない。物理的に真っ暗になったのだ。

 暗闇の中、キョロキョロとあたりを見回していると、電子音とともに大きなパネルが表示され、機械的な声が響く。


「地元征服の準備はよろしいですか?」


 パネルには声と同じ内容が文字で表示されており、選択肢が提示されている。

 ・覚悟完了

 ・世界征服希望


 って、2択しかねえのかよ。地元征服か世界征服の2択って両極端だな。もう少しいい塩梅の中間の選択肢がほしいものだ。

 まあいい。面白そうだし、ここはダメ元で世界征服を選択するとしよう。

 えい。


「現在のランクでは不可能です。顔を洗って出直してきてください」


 やっぱダメか。現在のランクってことは、将来ランクが上がったら、世界征服も夢じゃないってことか? ちょっとワクワクするな。


「地元征服の準備はよろしいですか?」

 ・覚悟完了

 ・世界征服希望


 こいつはゲームに搭載したAIなんだろうか。機械的に同じ問いと選択肢が提示される。

 現段階では「地元征服覚悟完了」しか選択肢がないのはわかるが、このまま大人しく受け入れるのも何だか癪に障る。

 よし、もう一度「世界征服希望」を選択してやれ。

 えい。


「現在のランクでは不可能です。顔を洗って出直してきてください。地元征服の準備はよろしいですか?」

 ・覚悟完了

 ・世界征服希望


 もう1回「世界征服希望」だ。

 えい。


「現在のランクでは不可能です。顔を洗って出直してきてください。地元征服の準備はよろしいですか?」

 ・覚悟完了

 ・世界征服希望


 まだまだ。

 俺は世界征服をあきらめないのだ。フハハハハハ。

 えい。


「そんなにハードな戦いをご希望なら……」


 んん?

 なんだなんだ?

 反応が変わったぞ。


「あなたには、とっておきの超絶修羅モードを体験していただきましょう」


 え? え? なになに?

 俺は世界征服を希望しただけなんだけど。

 超絶修羅モードって何だよ。絶対ヤバいやつじゃん。


「ご、ごめん! 俺が悪かった! おふざけが過ぎました。初心者なんで、やっぱり地元征服からはじめさせてください!」


「それでは邪神復活プログラム【DNF】裏ミッション【超絶修羅モード】を開始してください」


「ちょっ、まっ――」


 ・

 ・

 ・


 そのあとの出来事は思い出したくもない。

 戦隊ヒーローの大群に袋叩きにされ……

 魔法を操る異端審問官たちに口に出すのも憚られるような拷問の数々を受け……

 光の聖戦士を自称する狂信者たちに斬り刻まれ……

 伝説の勇者には何度も何度も必殺技を喰らわされ……

 そして最後は神から痛恨の一撃を与えられた。


 オーバーキルに次ぐオーバーキル。

 身も心もボロボロになった俺が最後に見た光景は、見知らぬ男に●●●されるという悪夢だった。

 息をする気力さえも残っていなかったはずなのに、ゲロを吐いてのた打ち回る。

 ゲロと涙と鼻水と小便にまみれながら這いつくばった俺の意識は、最低最悪の気分のままプツリと途切れた。


 GAME OVER





 ※ゲーム版には【超絶修羅モード】は存在しません。ですが、代わりとなるエンドコンテンツはちゃんと用意してありますので、ご安心ください。