キマイラ文庫

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デモンズナイトフィーバー

喜多山 浪漫

episode 11


「おめでとうございます。地元征服率20%を達成しました」


 うーむ。

 たかが地元。小さな町ひとつとはいえ、こんなにも早く20%も征服できてしまっていいのだろうか。


「んん? 顔色が優れぬな。どうしたというのだ、我が使徒よ?」


「いや、なんだかすごいスピードで地元征服が進んでいるんだけど大丈夫なのか、これ……?」


「にゃははは、早くて当然。このデモンズナイトフィーバーは我が暗黒の歴史を追体験する儀式だ。限られた時間の中で儀式を完成させるために、あれやこれやと短縮している。貴様が今体験しているのはダイジェスト版ゆえにスピードが速く感じられるのは当然のことだ」


「ふーん。邪神様の人生(?)のダイジェスト版なわけか。そういや、いきなり怪人からスタートしたけど、邪神様って生まれたときから怪人だったのか?」


「……いや、貴様と同じ人間だった。」


 おっと、突如明かされる衝撃の事実。

 この愛嬌のある黒猫姿の邪神様が、もともとは人間だってか?

 噓でしょ? にわかには信じがたい。


「我だけではない。いかなる魔王も邪神も誰もが知っているあの超有名ラスボスも最初は人間からスタートだったのだぞ?」


 全国の陰の者たちに朗報!!

 邪神様の話が事実なら、俺みたいに三流ブラックゲーム会社の万年社畜や、半永久ニート、いじめられっ子も、いつの日か邪神になれるってことだ。そうすれば、ずっと俺たちを虐げれてきたやつらに復讐できる。

 邪神様の言葉は、俺たちのような陰キャ、モブキャに一筋の希望を与えてくれるものだ。


「じゃあ、俺も人間やめて魔王とか邪神を目指してみよっかな。転職したところで、どうせ世の中クソまみれだし、いっそ人間やめて転生したい」


 あわよくば邪神様にアドバイスを求めようと、ちらちらと邪神様の顔色を伺ってみる。

 しかし――


「貴様には無理だ」


 バッサリ否定。

 否定されるのは慣れているけど、こうやって希望をちらつかせてから、ドンッと突き落とされると、鋼の精神力を持つ俺でも多少はこたえる。俺のこと何も知らないくせに、無理と断言されるのも腹立たしい。


「な、何でだよ?」


「童貞の貴様には無理だ」


 ど……。


「ひ、ひどい! つーか、なんで俺が童貞だって知ってんだよ!? つーか、童貞は関係ないだろうが!!」


 確かに俺は童貞だ。現在29歳、彼女いない歴=年齢の男だ。

 でも、だからと言って俺の魔王になる、邪神になるという願望をたった一言で奪い去るほど、童貞は罪深いものなのか?

 世の中には俺よりも長きにわたり純潔を守り通しておられる先輩方もおられる。彼らは未来の俺だ。その彼らの生き様を否定するかのごとき言動に憤りを覚えずにはいられない。


「さ、差別だ!! 童貞は悪いことじゃない!! 断固撤回を要求する!!」


 猛抗議する俺を邪神様は生暖かい目で見下すだけ。

 何もわかっちゃいないといった表情でため息をつき、首を横に振る。

 くっ……。完全に馬鹿にされている。


 あとになって知ることだが、このときの俺は本当に何もわかっちゃいなかった。

 邪神様の言う通り、俺には資格がなかったのだ。

 俺が邪神様の言葉の真意を理解するのは、まだ少し先の話になる。