キマイラ文庫

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デモンズナイトフィーバー

喜多山 浪漫

episode 12


「おめでとうございます。地元征服率30%を達成しました」

「おめでとうございます。地元征服率40%を達成しました」


 いまだこのデモンズナイトフィーバーが夢なのか妄想なのか現実なのか測りかねて戸惑っている中、与えられたミッション『地元征服』だけが猛スピードで進行していく。


「おめでとうございます。地元征服率50%を達成しました」


 なんと、もう地元を半分も征服してしまった。

 うーん、なんだかなぁ。

 こんなにも早く征服されてしまう我が地元のショボさを嘆けばいいのか、俺に悪の才能があったことを喜べばいいのか、複雑な心境だ。

 どちらにせよ、早いところもっとスケールの大きな悪になりたい。


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 んん?

 突如、目の前の風景が崩れる。

 ……なんだこりゃ? バグか?


「おーい、邪神様。これ、どうなってんだ?」


 邪神様のデバッグ不足のため、進行不能バグが発生。

 邪神復活の儀式デモンズナイトフィーバーは中止。

 ……なーんてこたぁないよな? ない、よね?


「これは……。もうかぎつけられたか」


 先程までご機嫌さんだった邪神様の表情が険しいものに変わっている。そこに間髪入れず激しい警報と機械的な音声が鳴り響く。


 WARNING!使徒来襲!WARNING!使徒来襲!WARNING!使徒来襲!


 何事かと思って周囲をキョロキョロしながら見回して警戒していると、バグった背景からニョキっと戦隊ヒーローたちが現れた。1人や2人じゃない。10人以上いる。


「これは……! 邪神様がやったのか!?」


「……いや。これは意図せぬ来襲。神のハッキングだ。」


「はあ!? 神のハッキング!?」


「さよう。邪神復活の儀式デモンズナイトフィーバーを阻止するために、神が刺客を送り込んできたのだ」


「マジかよ……。もう神に目を付けられたってことか」


「おそらく神は、貴様が戦いにくい相手を厳選して特別な使徒を用意したはずだ。心せよ」


 邪神様が真剣なまなざしで忠告する。

 俺の戦いにくい相手だって……?

 いったい、誰だろ?

 こ、怖くなんかないぞ。そんなことでビビったりする邪龍院狂死狼ではないのだ。


「フハハハハハ! 馬鹿め! 人類滅亡、リア充爆発を望む俺に戦いにくい相手なんて存在するはずがない!!」


 と強がって断言しておく。

 俺が社会人になると同時に、足枷がなくなったとばかりに両親が離婚したのが11年前。今はオヤジもおふくろもそれぞれのパートナーを見つけ、子供までいるらしい。お盛んなことで何よりだ。今頃は俺のことなんざ忘れて、新しい家族と幸せな人生を送っていることだろう。世界はクソだ。人間はクソだ。早く滅びてしまえばいい。

 そんな一匹狼の俺に戦いにくい相手なんて存在するわけがない。


「ぴよぴよ。ぴよぴよ」


 んん?


「ぴよぴよ。ぴよぴよ」


 戦隊ヒーローの中にいる黄色いコスチュームを着たやつが、さっきからピヨピヨ言っている。人の姿をしてはいるが、声は完全にヒヨコのそれだ。それにこの鳴き声は……。

 ヒヨコといえば、思い出がある。あれは小学生のときだ。家を空けがちだった両親が罪悪感を紛らわせるためにどこかからもらってきたヒヨコ。それがぴよちゃんだ。ニワトリに成長する前に亡くなってしまったぴよちゃん。一緒に過ごした期間は短かったけれど、俺にとっては両親よりも家族に近い存在だった。


「ぴよちゃん……?」


「ぴよぴよぴよぴよ」


 そうだよ、ぴよちゃんだよ、と言っている気がする。


「姿は全然ちがうけど、この鳴き声は小1のときに飼っていたヒヨコのぴよちゃんに間違いない!! なんで!?!? どうして!?!?」


「貴様をキルするために神がぴよちゃんの魂を利用したのだ。神のやつめ……。相変わらず手段を選ばんな」


 ぴよぴよ、ぴよぴよと、ぴよちゃんが悲し気に鳴いている。

 きっと不幸な再会に心を痛めているに違いない。


「許せねえ……! これがゲームだろうが俺の妄想だろうが、もう関係ねえ……! 絶対に神をキルしてやる!!」


 邪神復活は邪神様からの依頼、いわば受動的な目的だ。

 だが、これで俺にも能動的かつ明確な目的ができた。

 俺は、神を、キルする。