エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~
喜多山 浪漫
episode12
悪役令嬢、一度決めたら何が何でもやり通す。
ワタクシこと、エトランジュ・フォン・ローゼンブルク公爵令嬢は、どんな障害が立ちはだかろうとも一度決めたことは何が何でも実行に移し、実現してきた。
たとえ王や第一王子に否定されようとも、やると決めたことは絶対にやる。それがワタクシの生き方だ。
そんなワタクシが専属メイドであるスイーティアを救うと決めたのだ。それはすなわち、彼女はもう救われたも同然ということに他ならない。
「ご主人様。あのメイドをお救いになりたいというお気持ちはわかりました。ですが、地獄の断罪人がやすやすと罪人を手放すはずがありません。一体、どうなさるおつもりですか?」
憂いを帯びた表情がこれまたイケメンのヒッヒが至極まっとうな問いかけをしてくる。
まっとうな問いには、まっとうな答えを返して差し上げねばなるまい。
「もちろん力ずくですわ(^^)」
相手は殺る気まんまんでムチを構えている地獄の断罪人たちだ。話せばわかるという相手ではない。話してわからない相手には力ずくでわかっていただくしかない。
これはワタクシの経験上、120%間違いない真理である。
「そんな無茶な~。勝てっこないよ~」
また弱気の虫が顔を出したのか、ヒャッハーが情けない声を上げる。
「勝てるとか勝てないとか、できるとかできないとか、そんなことは関係ありませんわ。相手の強さや偉さによって妥協するなんて、絶っっっ対に嫌。救うと決めたからには、どんな手段を使ってでも絶対に救ってみせますわ」
「ご主人様。あのメイドは家来でありますよね? 家来のために、なぜご主人様がそこまでするのでありますか? 普通のご主人様なら我が身可愛さに家来を見捨てる場面でありますよ」
クックの疑問はあるいは当然なのかもしれない。
これまで見てきた王侯貴族たちは、自分が窮地に陥ると必ずと言っていいほど、家来を盾にした。自分の身代わりとして犠牲にした。ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)が聞いて呆れる。
「スイーティアはどんなときもワタクシの味方をしてくれた。そして、いつもワタクシのために超絶美味しいスイーツを作ってくれた。救うには十分すぎる理由ではなくて?」
「ご主人様、あなたというお方は……」
見ると三人組は涙を流しながら打ち震え、ワタクシに向けられた瞳は忠誠心でキラキラと輝いている。
うーむ。そんなに感動されるとちょっと困る。
ワタクシはワタクシの心の赴くままに行動しているだけで、人としての常識とか地獄のルールとか、そういうのは全部ガン無視しちゃっているわけだし。正直、超わがままな生き方をしているという自覚は、これでも一応あるのだ。
「にゃーご」
まあ別にいいじゃないか。エトランジュはエトランジュらしく生きるのが一番さ。
ネコタローがそう言って背中を押してくれている。
……と思うのは、さすがに都合が良すぎるかしら?