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エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~

喜多山 浪漫

episode27

悪役令嬢、家来も二つ名も増える一方。

「うぅ……。ワルサンドロス商会が誇る魔改良作品の数々を歯牙にもかけねえとは……。こんな馬鹿なことがあってたまるか! てめえは何者だ! 魔神か何かか!?」


「魔神エトランジュ……。ふふっ。なかなか悪くない響きですわね」


「……やれやれ、その余裕。どうやら俺たちの完敗のようだな。人間に驚かされるのはこれで二度目だぜ」


 ほほう? 歴戦の傭兵を驚かせる人物が他にもいるのか。実に興味深い。できれば家来に加えたいものだ。

 そんなワタクシの思惑を知る由もなく、傭兵団のリーダーは続ける。


「アンタこそ俺が知る最強最恐最凶の究極の人間兵器だ、お嬢ちゃん。……いや、さんと呼ばせてくれ」


 齢17にして姐さんと呼ばれる身になってしまったか。

 ついでに二つ名も連続ゲット。地獄に来てから、これで3つめか。

 ・闇の聖女エトランジュ

 ・魔神エトランジュ

 ・最強最恐最凶の究極の人間兵器エトランジュ

 うーむ。どれも物騒なものばかりだ。

 ワタクシも年頃の女の子。『花盛りの乙女エトランジュ』とか『華麗なる公爵令嬢エトランジュ』とか、たまにはそういう二つ名も付けてほしい。


 おや?

 傭兵団のリーダーがモジモジしながら、こちらを見ている。


「ああ、家来になりたいのかしら。ローゼンブルク公爵家は来るもの拒まず。もちろん、よろしくてよ」


「あ、ありがてえ! 俺の名はシュワルツ。兵器のことなら俺に任せてくれ。必ずアンタの役に立ってみせるぜ、姐さん」


 また家来が増えた。この調子で増えていけば1ヶ月も経たないうちに本当に地獄の大軍団が完成しそうな勢いだ。

 ま、それはそれでいいとして。あれだけ高位の魔法を連発したのだ。さぞかしを消費していることだろう。


「ステータス」


 ステータス画面を呼び出してMPを確認してみると……

 《MP:-893》

 おい。マイナスて。

 ステータスにマイナスってあるんだー。へー。などと感心している場合ではない。これは緊急事態。このままだと寿命が縮まってしまいそうだ。今のワタクシに寿命があるのかどうかはさておき、放置しておくとロクなことにならないだろう。

 ああ、いけない。なんだか周囲の人も物も、すべてがスイーツに見えてきた。

 これは末期症状だ。至急、スイーティアに極上のスイーツ1年分を用意してもらわねば。


「スイーティア!!」


「はい、お嬢様」


 見ると、スイーティアの両手には色とりどりのスイーツがずらりと並んだ皿が用意されている。その後ろに控える家来たちも両手いっぱいのスイーツを抱えている。

 スイーティアは、すべてわかっていますよ、と言わんばかりに優しく微笑んでいる。マジ天使。スイーツの腕前もさることながら、この神がかった気配りこそが彼女最強のスキルだと言えよう。


 しかし、今は緊急事態。一刻の猶予もない。申し訳ないがスイーティアへの感謝と賛辞は後回しにさせてもらうとして、ここは公爵令嬢としてのエレガントさも一時的にかなぐり捨てて、ただひたすら目の前のスイーツをむさぼり喰らうとしよう。

 いただきます。