キマイラ文庫

魔法捜査官

喜多山 浪漫

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目次

魔法捜査官

喜多山 浪漫

第4話

『Nightmare(悪夢)』<14>

 包丁を振りかざして襲い掛かってくるウエディングドレスの女から逃げ、今度はCODEレッドから逃げる羽目になった。本来、警察官って追い駆ける側だった気がするんだけどなぁ……。

 やっとの思いで赤い瘴気を振り切った後、僕と3人の魔法使いはしばらく声を出すこともできずに、息を整えるのに精一杯だった。

 こんなふうに走り回るのは、いつ以来だろうか? 柔道部時代の猛特訓を思い出す。それでも、いつだったかアルペジオをお姫様だっこして全力疾走したときよりかはマシだ。

 それより問題は3人の魔法使いだ。ほとんど戦闘していないのに疲労困憊の極み。とにかく体力の消耗がひどい。明らかに運動不足によるものだ。無事に生還したら、竜崎係長にトレーニング器具の設置を申請せねばなるまい。


 不運は続くもので、間の悪いことに傷んだ床と天井の隙間からもぞもぞと生理的嫌悪感を抱かずにいられない容姿の魔法生命体(ゴーレム)たちが現れる。この幽霊屋敷と噂の洋館は、どうやら僕たちを休ませる気がないらしい。

 鏑木め。よくもこんな場所を選んでくれたものだ。


「どうしますか、皆さん? 戦闘を回避しますか?」


 捜査官の命令には絶対服従とはいえ、強制するのは僕のスタイルじゃない。民主主義の精神に則り、疲労の激しい魔法使いたちに希望を聞いてみる。まあ、答えは聞くまでもないのだが。


「もう走れまへん」


 汗だくのままのミスターが首を横に振る。


「見てくださいよ、これ。足がガクガク震えています」


 アルペジオが生まれたての小鹿みたいになっている。


「アタイは尽くすタイプの女だからな。ダーリンの命令だったら何だって聞くぜ」


 投票の結果、戦闘に2票、ローリングサンダーの投票は無効扱いとし、戦闘する運びと相成った。


「魔法使いアルペジオ、魔法使いミスター、魔法使いローリングサンダー、戦闘モード。可及的速やかに魔法生命体(ゴーレム)を撃滅してください」


 やるからには徹底的に。

 現時点で視界に入っている魔法生命体(ゴーレム)は、後腐れのないようにすべて処理しておきたい。洋館内に入ってからここまで常に臨戦態勢だったため、すでにグリムロックは解除してある。魔法の使用制限はLV30。しかも優秀な魔法使いが3人もいる。

 ちなみに現時点で彼らが使用できる魔法は――


《魔法使いアルペジオ》 LV30

【攻撃魔法】

 パイロ(炎属性攻撃魔法)

 アイス(氷属性攻撃魔法)

 ストーム(風属性攻撃魔法)

 ボルト(雷属性攻撃魔法)

 メガパイロ(パイロの上位魔法)

 メガアイス(アイスの上位魔法)

 メガストーム(ストームの上位魔法)

 メガボルト(ボルトの上位魔法)

 パイロド(パイロの全体魔法)

 アイスド(アイスの全体魔法)

 ストームド(ストームの全体魔法)

 ボルトド(ボルトの全体魔法)


【回復魔法】

 なし


【補助魔法】

 ブースト(身体強化)

 マジックバリア(魔法防御)



《魔法使いミスター》 LV30

【攻撃魔法】

 なし


【回復魔法】

 ヒール(HP(体力)回復)

 キュア(解毒)

 エリアヒール(ヒールの全体魔法)

 エリアキュア(キュアの全体魔法)


【補助魔法】

 リフレクション(魔法反射)

 ドレイン(MP(マジックポイント)吸収)

 バフ(味方の魔法および物理攻撃力アップ)

 デバフ(敵の魔法および物理防御力ダウン)



《魔法使いローリングサンダー》 LV30

【攻撃魔法】

 なし


【回復魔法】

 なし


【補助魔法】

 ブースト(肉体強化) ※重複可

 スピードアップ(加速) ※重複可

 アンチマジック(魔法耐性) ※重複可



 ……うん。

 相変わらずミスターは見た目に反して後方支援魔法のみだし、ローリングサンダーは魔法で強化してからの肉弾戦が前提だ。ここはやはり頼れる相棒アルペジオの出番だろう。

 最大火力であるパイロド(パイロの全体魔法)を使って、魔法生命体(ゴーレム)を燃やし尽くしてしまいたいところだが、この古びた洋館に燃え移りでもしたら、あっという間に延焼して大火災になりそうだ。ここは安全にアイスド(アイスの全体魔法)で敵を凍り付かせるとしよう。


「アルペジオさん。全体魔法アイスドを使用してください」


「はい、捜査官殿」


 アルペジオはいつものように華麗な身のこなしで……というわけにはいかず、肉体的疲労のためにヨレヨレになりながら氷の魔法を周囲の敵に放つ。見る限り、敵よりもアルペジオのほうが痛そうだ。明日は間違いなく筋肉痛だろう。

 全体魔法アイスドは幸運にも魔法生命体(ゴーレム)の弱点だったらしく、瞬く間に活動を停止した。このところ不運続きだったから、これぐらいの幸運が巡ってこないとやってられない。


「念のため、凍った魔法生命体(ゴーレム)を破砕しておきましょう」


 あとで氷が解けて活動再開でもされたら、たまったものではない。死滅していると思いたいが念には念をだ。魔法犯罪捜査係に配属されて以来、嫌な予感と不運には自信があるのだ。


「アイアイサー」


「はーい、ダーリン♪」


 出番のなかったミスターとローリングサンダーが率先して凍り付いた魔法生命体(ゴーレム)を踏みしだいて破壊していく。さすがにここまでやっておけば復活することはないはずだ。

 トドメを刺して安心したせいか、底冷えするような冷気を感じる。

 全体魔法アイスドの効果で周囲の気温は当然のように下がっている。それはわかる。そうではなくて、背筋が凍りつくような怖気がぞくりと走るのだ。

 嫌な予感がして、ゆっくりと後ろを振り向くと――

 いた。

 案の定、そこにはウエディングドレスを着た女がたたずんでいた。