キマイラ文庫

魔法捜査官

喜多山 浪漫

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目次

魔法捜査官

喜多山 浪漫

第5話

あるいは幕間狂言『G――黒いアイツ』<4>

 轟管制官からGへの攻撃命令が下った。

 前方を指さし、高らかに宣言した彼女は、まるで巨大怪獣討伐を指揮する司令官のようだ。こちらの士気も否応なしに高まる。

 当方の戦力は魔法使い2名。魔法使いアルペジオと魔法使いミスター。


《魔法使いアルペジオ》 LV10

【攻撃魔法】

 パイロ(炎属性攻撃魔法)

 アイス(氷属性攻撃魔法)

 ストーム(風属性攻撃魔法)

 ボルト(雷属性攻撃魔法)


【回復魔法】

 なし


【補助魔法】

 ブースト(身体強化)

 マジックバリア(魔法防御)



《魔法使いミスター》 LV10

【攻撃魔法】

 なし


【回復魔法】

 ヒール(HP(体力)回復)

 キュア(解毒)


【補助魔法】

 リフレクション(魔法反射)

 ドレイン(MP(マジックポイント)吸収)


 二人の実力を考えればLV10では出し惜しみが過ぎるというものだが、それでもアルペジオは攻撃魔法と補助魔法、ミスターは回復魔法と補助魔法があるため戦力的にはバランスが取れている。

 人類の敵と言えど、所詮GはG。ただの虫けらと言えば虫けらだ。LV10もあれば容易く駆除できる。しかも、こちらには優秀な魔法使いが二人もいる。確実に始末できる……というより、むしろオーバーキルだ。


 ミスターにはいつでも回復魔法を使えるように待機を、攻撃の要となるアルペジオには氷属性攻撃魔法アイスの使用を指示する。

 集中力を高めるための呪文を唱えると、アルペジオの差し出した右手に凍てつく空気が集まっていく。それが氷の塊となり、G目がけて射出される。

 氷柱のように尖った氷は、空中でホバリングしていたGを正確に捉えた。

 ……かに見えた。

 しかし、氷柱はGをすり抜けて壁に突き刺さる。

 くっ。外したか。


「アルペジオさん。第二射は雷属性攻撃魔法ボルトでお願いします」


「わかりました、捜査官殿」


 雷属性攻撃魔法ボルトは、炎氷風雷の四属性の中で最も威力が高いとされている。炎には延焼によるダメージの追加効果、氷には相手を凍てつかせて一時的に行動不能にする追加効果、風には稀に相手の行動をキャンセルする追加効果がある。実際、炎属性攻撃魔法パイロにはそれで随分と助けられてきた。しかし、さすがに警視庁が全焼なんてことになったら懲戒免職程度では済まされない。

 そこで雷属性攻撃魔法ボルトの出番だ。電撃の威力が強く、延焼もない。高確率で相手をしびれさせる追加効果も期待できる。何よりも射出後のスピードが抜群に速いのだ。

 今度はアルペジオの右手がパチパチと電気を帯びていく。

 光った。と思ったときには、すでにGに向かって一直線に射出された。アニメやなんかでよく見かけるビーム攻撃さながらだ。これでさしものGもお亡くなりになったに違いない。


 ブーン。


 ば、馬鹿な!

 あれをかわしただと!?

 アルペジオが「あわわわ、どうしましょう……?」と言わんばかりの不安げな表情で僕のほうを見る。

 Gはせいぜい大人の親指サイズ程度の大きさ。あまりにも的が小さい。敵魔法使いや魔法生命体(ゴーレム)を相手に魔法を使うのとは勝手が違い過ぎる。

 魔法の使用は魔法犯罪捜査のときにしか許可されていないため、的を狙って撃つ射撃訓練のようなトレーニングはしていない。各魔法使いの才覚に頼りきりなのだ。それがこの状況下で思いっきりマイナスに働く結果となってしまった。


 二度の攻撃で完全に僕たちを敵と認識したGが容赦なく飛び掛かってくる。


「きゃあああ!!」

「わあああああ!!」

「ぎゃはぁああ!!?」

「死ぬぅううぅぅ!!」


 どれが誰の声だかわからないほど、甲高い悲鳴があちこちから響く。もしかすると、僕も無意識のうちに悲鳴を上げているのかもしれない。

 おのおのがGの突撃をかわすのに精一杯で戦場は大混乱。戦況も悪化していくばかりで手の施しようがない。このままでは自滅だ。HP(体力)もさることながら、極度の恐怖と緊張による精神的ダメージが著しい。


 反撃しようにも、すばやく逃げるGに魔法攻撃が当たらない。身を隠そうにも、あらゆる隙間に入り込むGに対して逃げ場はない。

 いいようにGに翻弄されてしまっている。対策もなく、時間ばかりが経過していく。このまま手をこまねいていては一人、また一人と殉職し、いずれ全滅が待っている。

 一体、どうすれば……?

 かくなる上は、自爆覚悟でGと差し違えるしか方法はないのか?