エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~
喜多山 浪漫
episode122
悪役令嬢、二度死ぬ?
「大丈夫かい、エトランジュ……?」
「起きなさい、エトランジュ……」
う、ん……?
この声は、お父様……。それにお母様の声だ……。
どうして、お父様とお母様の声が聞こえるの……?
ああ、そうか。
いまいち記憶は定かではないが、Gの大群の襲撃を受けたワタクシたちは、黒猫型移動要塞マカロンもろとも墜落したのだった。
「……ワタクシは死んだのね?」
悪役令嬢は二度死ぬ。……完。
「いやいや、地獄の魔王であるお前が墜落したぐらいで死ぬわけがないだろう」
横たわっているワタクシの頭を安堵の表情でなでながらそう言ったのは、黒猫のネコタローだった。
ワタクシは上空500メートルの高さから墜落したぐらいでは死なないのか。そうですか。それはもう人間とは言えないですわね。
「ご主人様のしぶとさはゴキブリ並みだね。ひゃはっ☆」
ぞわっ。
お願いだからGと同等の扱いをするのはやめてちょうだい。
仲間たちの安否が気になり、辺りを見回してみる。
みんな、せっせと猫型移動要塞マカロンの修復にあたっている。あれだけのことがあったというのに、たくましいものだ。
「良かった。みんな無事だったのね……」
「ええ、お嬢様。ネコタローのやつが闇魔法マグネチートで間一髪マカロンが墜落して地面に叩きつけられるのを防いでくれたのですよ」
「えっへん。これで失点は回復したな、ジュエルよ?」
「調子に乗るな。だが、お嬢様の危機を救ったことは認めてやる」
なるほど。ネコタローの機転に救われたのか。それは後でたっぷりご褒美になでなでしてあげなくては。
ワタクシは二度目の死を迎えたわけではなかった。
しかし、そうなると、この現実はどういうことなのか?
なぜ、死んだはずの両親がワタクシの目の前にいるのだ?
「ふふふ。もしかして私たちを夢か幻かだと思っているのかい、エトランジュ?」
この公爵に相応しい風格と優しい笑顔。間違いない。お父様だ。
「早く目を覚ましなさい、眠り姫……なんて呼ぶには少し無理があるかしら。何せ魔王ですものね、ワタクシたちの娘は」
厳しさと優しさ、美しさと気品を兼ね備えた、ワタクシにとって唯一頭の上がらない存在。お母様だ。
「お父様……。お母様……」
そんな、まさか……。信じられない。
お亡くなりになってからというもの、あれほど会いたくて会いたくて仕方のなかったお父様とお母様。
こうして一人前のレディになってからも片時も忘れなことのないお父様とお母様。
ずっと天国からワタクシのことを見守ってくれていると信じていたお父様とお母様。
そのお二人が今、ワタクシの前で優しく微笑みかけてくれている。
「本当にお父様とお母様ですのね……?」
「ああ。そうだよ、エトランジュ」
「ふふっ。ようやく会えたわね、エトランジュ」
溢れ出るものが止まらない。
仲間たちに見られていようと構うものか。
「ああっ!! お父様!! お母様!!」
突然両親を失ったあの日から、弱みを見せてはならないと自分に言い聞かせて気丈に生きてきた。意地でも涙は見せまいと頑なに強がってきた。
でも……。
積年の思い、万感の思いが堰を切ったように止めどなく溢れ出してくるが、うまく言葉にできない。
ワタクシはただただ子供のように泣きじゃくった。
大好きな両親の温かい胸に抱かれながら……。