キマイラ文庫

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目次

エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~

喜多山 浪漫

episode132

悪役令嬢、死角なし。

「黒猫型移動要塞マカロン、発進せよ!!」


 ワタクシの号令に呼応してマカロンが無事に離陸する。愛機マカロンの完全復活だ。

 ……その愛機を顔面崩壊させたことは誠に申し訳ないと思っている。

 しかし、ワタクシは魔王エトランジュ・フォン・ローゼンブルク。転んでもただでは起きない。これを好機としてマカロンの顔面部分、すなわち艦長席のあるこのデッキにはちょっとした仕掛けを施してある。

 どんな仕掛けかは、見てのお楽しみだ。


 現在、天国は厳戒態勢。行く手には無数のGが待ち受けていることだろう。

 しかし、Gが何するものぞ。

 ワタクシにはイグナシオが作ってくれた特殊ゴーグルという強い味方がある。このゴーグルさえあれば、すべてのGは叔母夫婦に変換される。

 それはそれで悪夢と言えなくもないが、相手が叔母夫婦だと思えば娯楽感覚で楽しく撃ち落とせるから問題ナッシングだ。

 天使が巨大Gであるからには、神はもっともっと巨大な大怪獣Gの可能性もあるわけだが、その場合でさえも特殊ゴーグルを通せば巨大な大怪獣叔母夫婦に見えるだけなので、これまた楽しく撃ち落とせばいいだけのことだ。


 ちなみに。戦いに巻き込みたくないのでご先祖様たちには娯楽施設で待機してもらっている。

 もともと娯楽の少なかった時代に生きた人たちだったので、イグナシオとアホーボーンが用意した見たこともない遊技機の数々に大興奮。喜んで待機の提案に応じてくれた。

 しかし、我が両親だけは、娘が無茶苦茶しないか心配だからと言ってデッキの艦長席の隣に座っている。

 そのお気持ちはありがたいのですけれど、どうにもやりにくい。

 周囲には当然仲間たちもいる。これでは、うちの両親だけが来ている授業参観みたいだ。


「進行方向に飛行するGの群れを発見! どうする、お姉様?」


 操縦かんを握るイグナシオが緊張した声で尋ねてくる。

 現在、マカロンは光学迷彩機能を使用して飛行しているため、Gに見つかることはない。

 しかし、ワタクシの答えは決まっている。


「迎撃せよ! この世からもあの世からも一匹でも多くのGを減らしますわよ!!」


 Gから逃げるのは、もうたくさんだ。

 これからは見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)ならぬ見G必殺、悪即斬ならぬG即斬でいく。


「主砲三連斉射! ファイエル!!(撃てっ!!)」


 こうしてGとのリベンジマッチが開幕した。

 何の復讐(リベンジ)か?

 言うまでもなく、マカロンの顔面を崩壊させてくれた復讐に決まっている。


「姐さん! Gどもが急速接近! どうやら気づかれたようだぜ!」


 前回のお返しに今度はこちらから主砲をお見舞いして奇襲して差し上げた。

 飛行中も光学迷彩は有効だが、発射したミサイルやそれに伴う熱源までは隠し切れない。

 しかし、Gたちに察知されることは承知の上だ。

 急速に迫り来るGの大群を前にしてワタクシが余裕ぶっこいていられるのは、イグナシオお手製の特殊ゴーグルのおかげだ。

 正面の大窓からは黒い影が徐々に迫ってくるのが見える。以前のワタクシならば、この時点で正気を失っていた自信がある。

 ところが、この特殊ゴーグルを装着すると……。

 あら不思議。

 Gたちの姿がすべて叔母夫婦に変換された。

 おおー。

 科学技術万歳。

 魔法技術万歳。

 イグナシオ万歳。


 特殊ゴーグルを装着したまま操縦席にいるイグナシオを見る。

 イグナシオはGではないので、当然いつもと変わらぬ彼の姿が見える。

 グッと親指を立てて最大級の感謝を示すと、イグナシオも笑顔でグッと親指を立てて応える。


「イグナシオお兄様の科学力は世界一ィィィだね、お姉様!」


 自慢の兄を世界一と称賛するアホーボーン。

 しかし、世界一では不十分だ。


「世界一どころか宇宙一ですわ! さあ、撃って撃って撃って撃ちまくりなさい! おほほほほほほほ!!」


 もはやワタクシに死角はない。無敵状態だ。

 神だろうが邪神だろうが、どんと来い!


 ……と、そんなふうに思っていた時代がワタクシにもありました。