キマイラ文庫

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目次

エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~

喜多山 浪漫

episode103

悪役令嬢、サナギから蝶へ。邪神爆誕!?

「ふう……。終わったよ、お姉様」


 不具合を起こしていたワタクシの魔力回路は、闇属性の魔力によって無事に整ったらしい。隠された才能を存分に発揮してくれたアホーボーンの評価は今や自他ともに鰻登りだ。

 とはいえ、ほんの少し前までのアホーボーンがアホすぎたため、本当に魔法が使えるようになったのか、まだ信じがたいというのが正直なところである。


 どれ。試しに闇魔法を使ってみるとしよう。

 なんだかとっても久しぶりな気がして、ちょっぴり緊張する。


「闇の光よ、我が敵を滅ぼせ。ダークアロー」


 手のひらから懐かしい黒い光の矢が放たれる。

 ダークアローは、我が親友アリアのお腹に見事命中し、ぽよん♪と弾かれる。

 うん、狙い通り。


「こら、エトランジュ! 何をするのじゃ!」


「いや、闇魔法の試し撃ちを」


「それはわかっておるが、なぜわらわに向ける!? 外に向けて撃てばよいじゃろう」


「なるほど、そういう手もありましたわね。おほほほほほ」


 撃たれたアリアは福々しいほっぺをぷくりと膨らませてすねている。可愛い。

 かつてタイマン勝負をしたときに、ワタクシが放った重火器攻撃をすべてその身で受け止めたアリアだ。ダークアロー程度の魔法が通用するとは思っていない。だから軽い気持ちで、ぽよん♪と弾かれるのも見てみたくて、ついつい的にしてしまったのだ。てへ。


「無事に魔法を使えるようになったみたいだね」


「ええ。ありがとう、アホーボーン。感謝に堪えませんわ」


 周囲で固唾を飲んで見守っていた仲間たちも表情を緩めて、良かった良かったとワタクシが魔法を使えるようになったことを我が事のように喜んでくれている。


「でかしたぞ、アホーボーン。さすがは我が甥だ」


 ネコタローがアホーボーンの肩の上に乗って、器用に前足で可愛い甥っ子の頭をなでなでする。

 あ、それいいなー。


「あ、お姉様。魔力回路を整えるついでにレベルキャップも外しておいたからね」


 ん?

 レベルキャップ? 何それ?

 ワタクシが首をかしげていると、説明不足だったことに気づいたアホーボーンが補足する。


「ああ、レベルキャップっていうのは人間の身体にあらかじめ設定されている制限のことだよ。誰がどういう目的でレベルキャップを付けたのかはわからないけど、人間はたとえ勇者だとしてもレベル99までしか成長できないように設定されているのさ」


 オーマイガッ。

 なんてこった。人間世界ではレベル99が最高到達点で、伝説の勇者ですらレベル70。最高到達点に到達したのは唯一、伝説の邪神だと聞かされていた。

 だからレベル99の更に先があるとは考えてもみなかった。ワタクシとしたことが自ら検証もせずに噂話を信じ込んでしまうとは汗顔の至りだ。


「……じゃあ、これからはレベル100以上に成長できるわけですのね?」


「うん、そうだよー」


 常識にとらわれてレベル99が限界だと思い込んでいたことは大きな失敗だったが、それを悔やむよりも今後はレベルキャップがなくなって人間の限界を超えた強さを手に入れられることを喜ぼう。

 目指すは、レベル1万!!

 でもって、神をボコボコにして差し上げますわ。おほほほほほ。


「お嬢様。すんごい悪い顔になっていますよ」


 おっと、いけない。

 全知全能を誇る神をマウントポジションからボコボコにする未来を思い浮かべていたら、図らずも笑顔になっていたようだ。

 だけど、スイーティアから注意喚起されてもワクワクが止まらなくてニヤニヤしてしまう。長らく魔法を使えなくて抑圧された気持ちと、レベルキャップとやらが外れた解放感で、大空を羽ばたくことすらできるような高揚感に包まれる。


「レベル99が上限だった可憐でか弱い花の妖精のワタクシはこれで卒業。これからはサナギから蝶へと変身して大人の階段昇ることになりますのね」


 仲間たちに問いかけるように言ってみたのに誰も応えてくれない。皆、そろいもそろって何やら複雑な表情をしている。お腹でも壊したのかしら?

 まあいい。せっかくレベルキャップも外れたことだ。過去の戦闘でかなりレベルも上がっていることだろうし、全魔力を解放して新生エトランジュをお披露目するとしよう。それが魔法を使えなかったワタクシをここまでサポートしてくれた仲間たちへの最高の感謝のしるしだ。

 えい。


「!?!? お、お嬢様の身体が……!!」


「黒い稲妻のようなエネルギーに包まれていくのであります!!」


 全魔力を少しずつ解放していく。全身に力がみなぎっていくのがわかる。


「ひゃはっ!? 見て見て、ご主人様の髪の色が……!!」


 ん?

 髪の色がどうかしましたの?

 驚いて指さすヒャッハー。みんな目を見開いている。

 あ。

 毎日時間をかけて丁寧にカールしている自慢の巻き毛の色が変わっていく。

 人間世界でさんざん禍々しいと忌み嫌われてきた黒髪が、次第に淡い色になっていき、ついには黄金のように輝くブロンドヘアへと変化した。


「こ、これは……!?」


「おそらくレベルキャップを外して人間の限界を超えた影響だろうな」


 今までおそろいだった黒髪が金髪に変わって、ちょっと面白くなさそうに言うネコタロー。

 亡き両親は二人とも見事な金髪だった。ワタクシが生まれつき黒髪だったのは闇属性の魔力が人間離れして強かったからだ。しかし、人間の限界を超えた今、闇属性の魔力の呪縛から解き放たれて、両親の血を受け継いだ証である本来の金髪を取り戻したというわけか。


「すごい、すごいよ、お姉様! スーパーエトランジュZだね!!」


 どういう意味かはわからないが、少年が憧れのヒーローを見るようなキラキラした瞳で大はしゃぎするイグナシオ。


「やれやれ。これで姐さんは二丁拳銃の名手に、カンフーの達人、さらには闇魔法も復活って……。魔王どころか、とんだ邪神が生まれちまったんじゃねえのか、これ??」


 邪神エトランジュか。

 可愛くないのは気になるけれど、それも悪くないかもしれない。