エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~
喜多山 浪漫
episode131
悪役令嬢、天才的発明に万歳三唱。
黒猫型移動要塞マカロン修復完了の知らせを受けたのは3日後のことだった。
イグナシオの口ぶりでは、もっと早くに完了すると思っていたが、何かトラブルでもあったのか。
そんな心配が表情に出ていたのだろう。イグナシオがすぐさま遅れた事情について説明を始める。
「遅くなってごめんね、お姉様。マカロンの修復は順調だったんだけど、並行してコレを作っていたら予想よりも時間がかかっちゃって……」
申し訳なさそうに頭をかくイグナシオ。
隣のアホーボーンは申し訳ない気持ちは欠片もない様子でニコニコしている。
「コレというは?」
「うん、コレさ」
「んん? 眼鏡……? それにしては随分とゴツイですわね」
「これはね、特定の対象を別の何かに自動変換してくれる特殊ゴーグルさ」
「?? ……ちょっと何言っているかわかりませんわね」
「簡単に言えば、この特殊ゴーグルをかければ、Gが別の何かに見えるってことさ。これがあれば、もうGを怖がる必要ないよね?」
「な、なんですって!? そんな夢のような素晴らしいアイテムを開発するなんて、イグナシオってば、もう天才!! 完璧!! 最高!! これまでの発明の中でもダントツで一番!! このゴーグルさえあればワタクシはもう無敵ではありませんの!! おほほほほ!! そうですわ! この功績を称えて、みんなで万歳三唱しましょ!!
イグナシオ、万歳!!
イグナシオ、万歳!!
イグナシオ、万歳!!」
誰も一緒に万歳三唱してくれない。
え? なんで? これに勝る発明なんて未来永劫ないというのに。
「ははは。そんなに喜んでもらえてボクも嬉しいよ」
「お姉様。僕も手伝ったんだよ?」
褒めて褒めてと駆け寄ってくるアホーボーンの頭をなでてやる。よしよし。
すると大喜びでしっぽを振る。
いや実際にはアホーボーンにしっぽはないのだけれど、しっぽをフリフリしているようにしか見えないのだ。しっぽは、もちろん犬のしっぽだ。
それにしても、このゴーグルの発明は素晴らしい。もう一度なでなでして差し上げよう。よしよし。
「お姉様。今から設定するけど、何に変換したい?」
「何に変換してもいいの?」
「いいよ」
ふむ。何でもOKとなると選択の幅が広すぎる。
イグナシオの優秀さゆえだが、こうなると少々迷う。
「どうせなら可愛いものに変換するのがいいんじゃないの? たとえば、猫とか」
「却下だ」
アホーボーンの提案を即座に却下したのは、いつの間にかワタクシの足元で丸くなっているネコタローだった。
「G以外のものは元の姿のまま見えるのだろう? Gと間違えて俺が攻撃されるなんて事態は御免こうむるぞ」
ネコタローの言い分はごもっともだ。
提案者のアホーボーンは「ちぇっ、バレたか」と悪びれた様子もなく舌を出している。確信犯だったか。
「エトランジュが好きなものにすればいいのではないか? 好きなものに変換すれば、Gに対する恐怖心も和らぐだろう」
「好きなもの……。たとえば?」
「スイーツとか?」
「却下!!」
なんてことを言うのだ、ネコタローよ。
スイーツはワタクシにとって至高の存在。Gと置き換えるなんて、とんでもないこと。絶対に却下だ。
万が一にも、うっかりスイーツだと思って口にしてしまったら世にも恐ろしい大惨事が……。って、想像しただけでも気分が悪くなってきた。発想を切り替えねば。
「そうですわ! ワタクシ、いいことを思いつきましてよ!!」
「「「…………」」」
これこれ、キミたち。
そうやって、どうせ絶対ロクでもないことだって決めつけた顔をするのはおよしなさい。
チョッピリ傷つくじゃありませんの。
「……で、何に置き換えたいの?」
「叔母様と義叔父様ですわ」
特殊ゴーグルでGを別のものに変換したとしても、それが好きなものや罪もないものだと攻撃するのは躊躇われる。だったら、G以外の嫌いなものや憎たらしいもの、一切躊躇することなく引き金を引けるものに変換すればいいのだ。
その点、叔母夫婦なら完璧だ。遠慮なく銃弾を撃ち込める。闇魔法(禁呪含む)も使いたい放題。すべての武器兵器の使用も解禁できる。
、この完璧なひらめきは満場一致の賛成により採用されたのであった。