エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~
喜多山 浪漫
episode141
幕間狂言:光の聖女、目的のためなら手段を選ばず。
王と王妃が死んだ。
今朝、寝室で二人とも吐血して死んでいるのが発見されたのだ。
私は朝が弱いのでゆっくりと第一王子の腕の中で惰眠をむさぼりたいのに、王と王妃の急死のせいでエーデルシュタイン城内は早朝からてんやわんやの大騒ぎ。
私を腕に抱いていた第一王子は宰相であり、実の息子でもあるため、大慌てで騒ぎ立てる家臣どもに起こされてしまった。
私だけがベッドでゴロゴロと眠り続けるわけにもいかず、仕方なく普段よりもかなり早起きをする羽目になってしまったというわけだ。
まったく……。王と王妃が死んだからどうだというのだ。
王は王家の血を引いているという一点だけが取り柄の愚鈍な男。王妃はそんな王に付き従うだけのただのお飾りの女。こんなのがいなくなったところでエーデルシュタイン王国の屋台骨が揺らぐわけではないだろうに。
我が王国には正当な王位継承者たる第一王子と、そしてその婚約者たる私がいるのだ。次代の王と王妃がいるのだから無能な男と女が死んだところで、何をあたふたと狼狽える必要があるのか私には理解できない。
王と王妃の寝室に到着すると、必要最小限の関係者たちが緊張、焦燥、驚愕と各々思い思いの表情で立っていた。
第一王子はといえば実の父と母が死んだというのに涙一つ見せず、感情のない顔をしている。私が言うのも何だけれど、この第一王子も大概サイコパスだと思う。このサイコな王子様がベッドの上で激しく私を求めてくるときだけは感情むき出しになる。そのギャップが溜まらない。
サイコは最高……ふふふ。
ベッドの上に転がっている王と王妃の遺体を見ると、喉をかきむしるようにして苦しみ悶えながら死んだことが一目でわかった。無能な男と女が、能力に見合わない立場で搾取をしてきた末路がこれだ。特に同情する気にはなれない。
聞いてもいないのにクソ真面目な堅物の家臣が王と王妃の死因を報告しに近づいて来た。
曰く、死因は毒殺。
うん。知ってる。
だって、毒を盛ったのは私なのだから。
毒殺だと聞いても眉一つ動かさない第一王子と、眠たくてついあくびをした私を見て、堅物の家臣も、毒殺と診断した侍医も、その場にいる誰しもが何事かを悟ったらしく暗い表情で静かにうつむく。
どうやら気づいてくれたようだ。
うん。ちゃんと空気は読まないとね。
しかし、知られたからには生かしておくわけにはいかない。
しょうがない。役目に従って王と王妃の死因を追究した堅物の家臣も、侍医も、クソ真面目で空気の読めない彼らの巻き添えで毒殺の事実を耳にしてしまった他の連中も、王と王妃を毒殺した犯人として死んでいただくことにしよう。
王と王妃を殺したのだ。本人たちだけでなく、一族郎党皆殺しの刑に処せられるだろう。
さすがにこれにはチョッピリ同情する。でも仕方ない。悪いのは空気の読めない彼らだ。
王と王妃が死体で発見されたその日のうちに、政治的空白期間を作るわけにはいかないという理由で、第一王子が王位を継承することがすぐさま決定した。
同時に、第一王子の婚約者である私は王妃となることも確定した。
王と王妃の葬儀は……面倒だし別にいらないか。
ようやくだ。
ようやく幸せをこの手につかめる。
今、私の心は不思議なぐらいおだやかだ。
第一王子も家臣たちも私の意のままに動く。誰一人として異論を唱える者はいない。
残る重要イベントは、第一王子の結婚式のみ。
そのあとは……。
そうだ。いいことを思いついた。
死んだ王は身の程知らずにも世界征服などという野望を抱いていた。
すべてのイベントを終えてエーデルシュタイン王国を手に入れた後は、死んだ王の野望を引き継いであげるのもいいかもしれない。
光の聖女認定式に参列していた他国の王侯たちの中にも、なかなか美味しそうな男たちがいた。世界にはまだまだいい男たちが溢れている。
美男、美丈夫、美少年。
すべて平らげてやる。
それが私の世界征服だ。
ふふふ……。
あ~っはっはっはっはっはっ!!