キマイラ文庫

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目次

エトランジュ オーヴァーロード ~反省しない悪役令嬢、地獄に堕ちて華麗なるハッピーライフ無双~

喜多山 浪漫

episode140

悪役令嬢、天国での後始末を終えて…。

 神との最終戦争が決着を見た後は、粛々と戦後処理を進めていった。

 まず、元凶たるゴキゼブブには、真実を知った神から天罰が与えられた。

 どんな罰かというと、悪魔としての力を奪われて、魔法の使えないただの人間にされた。

 しかし、それでは犯した罪の重さと釣り合わないため、地獄で引き取ることにした。

 当然、仲間にするわけではない。Gの親玉を仲間にするなんて、とんでもない。

 ゴキゼブブには地獄の最下層でこき使われることが確定している叔母夫婦の更に下で働いてもらう。地獄のヒエラルキーの最下層オブ最下層というわけだ。

 この沙汰が下された際、ゴキゼブブは「いっそ殺してくれ!!」と泣きわめいていたが、殺してしまっては罰にならないため、地獄で生殺しにする。

 刑期は無期懲役ではなく、ちゃんと刑期を終えれば解放されるように、ほんの100万年に設定した。ワタクシって、つくづく慈悲深いと思う。


 ゴキゼブブ配下のGたちは洗脳されていただけだったということが判明。

 Gたちについては、ワタクシはノータッチ。神に一切の処遇を任せることにした。

 聞くところによると、神の手によって洗脳を解除された後は各次元の人間世界へと帰したらしい。

 今後、さまざまな次元の人間世界で巨大Gの目撃情報が多発するに違いない。

 本当にこれで良かったのだろうか……?


 余計な混乱を引き起こしてくれた叔母夫婦の教育係でもあるヒッヒ、クック、ヒャッハーの三人組は、責任を感じて職を辞すると申し出てきた。

 しかし、職を辞しても責任を取ったことにはならない、これからも我が地獄の軍団のために働くことで責任を果たしてほしいと伝えると、三人組は感涙にむせび泣いていた。


 余計な混乱を引き起こした当事者である叔母夫婦は、イグナシオとアホーボーンの手によって無事に修復された。眉間にワタクシが撃ち込んだ銃痕が残ったが、それはまあご愛敬というものだろう。

 ワタクシの予想通り、天国に希望を見出した彼らは勝手に天国へ来て、勝手に捕まり、勝手に洗脳されて、勝手に改造されて、ゴキゼブブに利用されたことがわかった。

 泣きわめきながら「私は悪くない!」と主張していた叔母様に、なんとお父様が平手打ち。その手は震え、瞳からは涙があふれ出していた。天国からすべて見ていたことを告げると、叔母様は膝から崩れて、大人しくなった。

 これにはさすがの叔母様も応えた様子で、三人組の話では最近は真面目に下働きをしているという。


 そして、最後に残ったのはワタクシの問題だ。

 天国に侵略してきたことや、神聖不可侵の天国の施設を破壊しまくったことが問題なのではない。神に勝利し、神を弟にした今、ワタクシ自身が神聖不可侵な存在のため、今や誰も天罰を下すことなどできない。

 そうではなく、ワタクシが死に至り、地獄へ堕ち、魔王となり、天国を侵略しに来た経緯を知った神が、怒り狂ったのだ。

 そりゃあ、もう激おこも激おこ。


「お姉様を処刑した人間は絶対に赦さない!!!!」


 と、鼻息も荒く、お怒りになられているわけだ。

 ワタクシの無残な死にざまを知り、やり切れない怒りを抱えていた地獄の仲間たちも荒ぶる神に大賛成。

 親友アリアの「人間世界、滅ぼすべし」という過激な宣言に同調する仲間たちの間で、人間世界侵略の機運が急速に高まっていった。

 ワタクシとしては復讐なんて全然興味ないんですけれど……。


 そんなワタクシの気持ちをよそに、神の采配によってワタクシとスイーティア、ジュエルに我が両親が人間世界……エーデルシュタイン王国で復活することが決定された。

 本来死ぬべきではない人間が死に、歴史が大いに歪んでしまった。それを正すために復活させるというのが神の言い分なのだが、すでに歴史は歪んでおり、今更ワタクシたちを生き返らせてもその歪みは余計に大きくややこしくなるだけなので、やめたほうがいいと思うんだけど……。

 神の采配を見ていると、ワタクシがいかに常識的かつ良識派であるのかが、よくわかる。


 スイーティアもジュエルも、ワタクシがいるところなら地獄でもどこでもついて行くし、特に人間世界に未練があるわけではないという話ではあったのだが……。


「私、お嬢様が女王様になられるお姿を見てみたいです! だって今まで稀代の悪女だの悪役令嬢だのと不当な評価をされてきたお嬢様が復活して女王様になるなんて、痛快じゃないですか!」


「スイーティアの言う通りです。お嬢様はエーデルシュタイン王国の正統なる王位継承者なのですから、それにふさわしい人生をもう一度やり直されるべきだと思います」


 生前からワタクシのそばに仕えてきた二人に、ここまで強く言われるとワタクシも弱い。

 主人たるワタクシが女王になるということは、彼らにとっても大変栄誉で誇らしいことだろうから。


 かくして神を加えた我が地獄の軍団は天国を侵略したその足で、今度は人間世界へ赴き、正統なる王位を取り戻す戦いへと乗り出すことになった。

 魔王であるワタクシ、先代魔王アホーボーン、先々代魔王ネコタロー、そして神を擁する我が地獄の軍団の前には、人間などまるでゴミのように蹂躙されていくことだろう。

 なんだかチョッピリ気の毒な気もする。

 せいぜい罪もない人たちをうっかり巻き添えにしないように注意するとしよう。


 正直、復讐とか女王とかよりも、ここらでそろそろ一息ついて毎日スイーツを食べながらのんびり過ごしたいところだけど、みんな盛り上がっちゃっているみたいだし、何よりも両親たちにはもう一度人間世界で平和で幸せな人生を送ってほしい。

 そして、せっかく人間世界へ戻るなら、地獄と同じように快適でスイーツなハッピーライフを送れる楽しい世界へと変革したいと思う。


 あるときはエトランジュ・フォン・ローゼンブルク公爵令嬢。

 あるときは魔王エトランジュ。

 お次は、女王エトランジュとして人間世界に革命の嵐を巻き起こして差し上げますことよ!

 おほほほほほほほ!




 第2部 天国編

 第4幕

  完